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愛するということ エーリッヒ・フロム

 

愛するということ 

 

「愛は技術だろうか。技術だとしたら、知力と努力が必要だ。」
  

そう、「愛する」ということについて、語り、実践するのは難しい。

それは人間に本能的に備わった自然な感情であって、決して学ぶものではなく、まして技術として身につけることのできるものではない。
愛とは然るべきときに然るべき相手に対し自然と湧き上がってくる感情で、私たちはそれをコントロールすることはできない。それな理性や合理性で語ることのできないものだ。
愛の名のもとに人を傷つけ、自らをも傷つける。
それゆえ人々はいつの時代も愛に悩み愛に苦しむ。
「学ぶこと」のできる愛、「技術として身につける」ことのできる愛、それは本当の愛でなない。

と、こんな風に考える人は多いのではないか。
特に若い人なら尚更そのように感じているんじゃないだろうか。

 

 

「愛」という感情が喜びや、悲しみ、怒り、などと同じように存在し、然るべき「愛する人」が現れれば自然とその人を「愛する」ことができるだろうという考え。
でもその考えでは、うまくいかない。「愛する」ことより「愛されること」を望んでしまう。愛されなければ愛せない。
ではどうすれば良いのか?

 


著者であるドイツ人心理学者、エーリッヒ・フロムは愛とは技術であり、技術である以上私たちは愛を学ぶことができそして習得することができるという。

エーリッヒ・フロムについて。

あとがきによればエーリッヒ・フロムは1900年にドイツに生まれる。ドイツ系ユダヤ人。
「エーリッヒ・フロムは新フロイト派とか、フロイト左派と呼ばれるが、一言でいえば、フロイトの心理学にマックス・ヴェーバーマルクスを接ぎ木して、精神分析学を「修正」し、社会心理学を生み出した」(「愛するということ」訳者あとがき)
また東洋の精神世界にも目を向け、仏教や禅の研究にも力を注いだ。

 

「愛するということ」

この本が最初に出版されたのは1956年。
1959年に邦訳が出版されてから今日まで五十年以上に渡り読み継がれてきた。
本書は、
1章「愛は技術か」
2章「愛の理論」
3章「愛と現代西洋社会におけるその崩壊」
4章「愛の練習」
という4章から構成されている。

平明な文章で書かれており、専門的な単語は出てこないので非常に読みやすい。

それゆえ大切な部分をさらっと読み過ごしてしまう恐れもあるので、何処か静かな場所でゆっくりと読んで欲しい。

 

以下、同書各章より引用

 

  • 1章「愛は技術か」

「たいていの人は愛の問題を、愛するという問題、愛する能力の問題としてではなく、愛されるという問題として捉えている」

 

「愛には学ぶべきことなど何一つない、という考え方の底にある第二の前提は、愛の問題とはすなわち対象の問題であって能力の問題ではない、という思いこみである」

 

「愛について学ぶべきものは何もない、という思い込みを生む第三の誤りは、恋に「落ちる」という最初の体験と、愛している、あるいはもっとうまく表現すれば、愛のなかに「とどまっている」という持続的な状態とを、混同していることである。」
 
「互いに夢中になった状態、頭に血がのぼった状態を、愛の強さの証拠だと思い込む。だが、じつはそれは、それまで二人がどれほど孤独であったかを示しているにすぎないかもしれないのだ」

 

  • 2章「愛の理論」

「人間のもっとも強い欲求とは、孤立を克服し、孤独の牢獄から抜け出したいという欲求である。」

 

「共棲的結合とはおよそ対象的に、成熟した愛は、自分の全体性と個性を保ったままでの結合である。愛は、人間のなかにある能動的な力である。」

 

「愛によって、人は孤独感・孤立感を克服するが、依然として自分自身のままであり、自分の全体性を失わない。愛においては、二人が一人になり、しかも二人で有りつづけるという、パラドックスが起きる。」

 

「愛は能動的な活動であり、受動的な感情ではない。そのなかに「落ちる」ものではなく、「みずから踏み込む」ものである。」

 

「愛は何よりも与えることであり、もらうことではない」


「(愛の要素とは)配慮、責任、尊重、知である」

 

「愛とは、愛する者の生命と成長を積極的に気にかけることである。」

 

「成熟した愛は「愛するから愛される」という原則に従う。未成熟の愛は「あなたが必要だから、あなたを愛する」と言い、成熟した愛は「あなたを愛しているから、あなたが必要だ」と言う。」

 

  • 3章「愛と現代西洋社会におけるその崩壊」

神経症的な愛を生む基本的条件は、「恋人たち」の一方あるいは両方が、親の像への執着を捨てきれず、かつて父親あるいは母親に向けいていた感情・期待・恐れを、大人になってから、愛する人の上に転移することである。」

 

「二人の人間が自分たちの存在の中心と中心で意志を通じ合うとき、すなわちそれぞれが自分の存在の中心において自分自身を経験するとき、はじめて愛が生まれる」

 

  • 4章「愛の練習」

「一人でいられる能力こそ、愛する能力の前提条件なのだ。」

 

「愛を達成するための基本条件はナルシシズムの克服である。」

 

「愛の技術を身につけたければ、あらゆる場面で客観的であるよう心がけなければならない。」

 

「自分自身を「信じている」者だけが、他人にたいして誠実になれる。」


「愛されるには、そして愛するには、勇気が必要だ。ある価値を、これがいちばん大事なものだと判断し、思い切ってジャンプし、その価値にすべてを賭ける勇気である。」

 

「人は意識の上では愛されないことを恐れているが、ほんとうは、無意識の中で、愛することを恐れているのである。」

 

「愛するということは、何の保証もないのに行動を起こすことであり、こちらが愛せばきっと相手の心にも愛が生まれるだろうという希望に、全面的に自分を委ねることである。愛とは信念の行為であり、わずかな信念しか持っていない人は、わずかしか愛することができない。」

 

「(人を愛することの基盤とは)それは能動性である」

 


愛に悩まない人はいないと思う。
愛の問題はきっと、生きてゆくことの問題なんだろう。
もし愛に悩み苦しんでいる人がいたらきっとこの本は、何かしら問題を解決するヒントを与えてくれると思う。

 

 

愛するということ

愛するということ